【経営者・管理者必見】17歳→18歳の障害福祉サービス|移行支援の基礎知識障害福祉サービスの経営者・管理者の皆様、日々の事業運営、誠にお疲れ様です。17歳という年齢は、利用者の方にとっても、支援を提供する私たちにとっても、大きな変化を迎える特別な時期ですよね。「18歳になったら、今利用しているサービスはどうなるんだろう?」 「児童福祉法から障害者総合支援法に変わるって聞くけど、具体的に何が違うの?」 「保護者の方に、どう説明すれば安心して移行してもらえるだろうか…」このような疑問や不安を抱えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。17歳から18歳への移行期は、利用されるサービスの根拠法が児童福祉法から障害者総合支援法へと変わる、非常に重要なタイミングです。この変化を正確に理解し、利用者の方やご家族へ適切な情報提供を行い、関係機関とスムーズに連携することが、私たち事業者には求められています。この記事を読んでいただければ、17歳から18歳への移行期における制度変更のポイント(児童福祉法と障害者総合支援法の違い)高校生(17歳)が利用できる主なサービス18歳への具体的な移行プロセスと手続き事業所として取るべき移行支援の具体的対応上記について、制度の基本から実践的なポイントまで、幅広くご理解いただけます。この記事が、皆様の移行支援に関する不安を少しでも和らげ、自信を持って利用者の方々の未来をサポートするための一助となれば幸いです。一緒に、大切な利用者の皆さんが安心して新たなステップに進めるよう、準備を進めていきましょう。17歳は重要な移行期!障害福祉サービスの制度が変わる理由17歳の利用者を支援する上で、まず理解しておきたいのが「なぜ18歳で制度が変わるのか」という点です。これは、利用するサービスの根拠となる法律が変わるためであり、単なる年齢の区切り以上の意味を持っています。ここでは、その背景にある法律の違いと、主な変更点を解説します。なぜ18歳で切り替わる?児童福祉法と障害者総合支援法の違い日本の障害福祉サービスは、主に年齢によって根拠となる法律が異なります。18歳未満の方は「児童福祉法」に基づいて障害児支援が提供され、18歳以上になると「障害者総合支援法」(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)に基づいて障害福祉サービスが提供されるのが原則です。児童福祉法は、児童の健全な育成を図ることを目的としており、支援の対象は「障害児」です。一方、障害者総合支援法は、障害のある方の地域生活や社会参加を支援することを目的とし、対象は「障害者(18歳以上)」および一部の「障害児(特定の難病等)」となります。このように、法律の目的や対象者が異なるため、18歳を境に制度が切り替わるのです。この切り替えをスムーズに行うことが、切れ目のない支援を提供する上で非常に重要となります。対象者・目的・サービス内容の主な変更点を理解する児童福祉法から障害者総合支援法への移行に伴い、具体的に何が変わるのでしょうか。主な変更点を整理しておきましょう。対象者の定義: 児童福祉法では「障害児」が対象ですが、障害者総合支援法では原則「18歳以上の障害者」が対象となります。サービスの利用には、多くの場合「障害支援区分」の認定が必要になります。サービスの目的: 児童福祉法に基づく支援は「療育」や「発達支援」が中心ですが、障害者総合支援法では「自立した日常生活・社会生活」の支援が中心となり、就労支援や地域生活支援などのメニューが豊富になります。サービスの種類: 放課後等デイサービスなどの児童向けサービスは原則利用できなくなり、生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援(A型・B型)、共同生活援助(グループホーム)といった成人向けのサービスに移行します。申請手続き: サービスの利用申請先が市町村の障害福祉担当窓口となり、サービス等利用計画の作成プロセスも変わります。障害支援区分の認定申請が必要になる場合が多いです。利用者負担: 負担上限月額の算定方法が変わる可能性があります。児童福祉法では世帯収入が基準でしたが、障害者総合支援法では本人と配偶者の収入が基準となります(施設入所などを除く)。これらの変更点を事前に把握し、利用者や保護者に分かりやすく説明することが求められます。高校生(17歳)が利用できる主な障害福祉サービスとは?では、18歳未満、特に高校在学中の17歳の方が利用できる主な障害福祉サービスにはどのようなものがあるのでしょうか。代表的なサービスと、利用にあたってのポイントを見ていきましょう。放課後等デイサービスの利用期限と注意点多くの場合、高校生(17歳)が利用している代表的なサービスが「放課後等デイサービス」です。学校通学中の障害児に対して、放課後や夏休み等の長期休暇中において、生活能力向上のための訓練等を継続的に提供するサービスですね。このサービスは児童福祉法に基づくため、原則として利用できるのは「18歳になるまで」です。つまり、高校3年生の年度末(3月31日)まで利用できるケースが多いですが、18歳の誕生日を迎えた時点で利用が終了となる場合もありますので、お住まいの自治体の運用を確認することが重要です。「卒業後も引き続き利用したい」というニーズもありますが、特例的な措置を除き、基本的には18歳で障害者総合支援法のサービスへ移行することになります。事業者としては、利用期限が近づいていることを早期に利用者・保護者に伝え、次のステップについて一緒に考える機会を設ける必要があります。相談支援(障害児支援利用援助・継続障害児支援利用援助)障害児支援を利用するためには、「障害児支援利用計画」の作成が必要です。これをサポートするのが「障害児相談支援事業所」であり、「障害児支援利用援助」(新規作成)や「継続障害児支援利用援助」(モニタリング・更新)といったサービスを提供します。17歳の時点でも、これらの相談支援サービスを利用して、放課後等デイサービスなどの利用計画を作成・更新しているケースが多いでしょう。18歳への移行期においては、この障害児相談支援事業所の相談支援専門員が、障害者総合支援法に基づく「計画相談支援」(サービス等利用計画作成)へのスムーズな引き継ぎをサポートする重要な役割を担います。事業者としては、日頃から担当の相談支援専門員と密に連携を取っておくことが大切です。移動支援など地域生活支援事業の活用市町村が主体となって実施する「地域生活支援事業」の中にも、17歳(高校生)が利用できるサービスがあります。例えば、「移動支援」は、屋外での移動が困難な障害児・者に対して、外出のための支援を行うサービスです。利用要件やサービス内容は市町村によって異なりますが、社会参加や余暇活動のために活用されているケースがあります。18歳以降も障害者総合支援法に基づく地域生活支援事業として継続されることが多いですが、こちらも移行に伴う手続きや内容の確認が必要です。事業者としては、利用者がどのような地域生活支援事業を利用しているかを把握し、移行後も継続して利用できるよう情報提供を行うことが考えられます。18歳への移行プロセス:事業者として知っておくべき手続きの流れ18歳への移行は、利用者本人や保護者だけでなく、事業者にとっても重要なプロセスです。手続きの流れを理解し、適切なタイミングでサポートを提供することが求められます。ここでは、移行に向けたタイムスケジュールや連携のポイント、主な手続きについて解説します。いつから準備?移行に向けたタイムスケジュールスムーズな移行のためには、早めの準備が肝心です。一般的には、18歳になる半年前、つまり17歳半頃から具体的な準備を開始することが推奨されます。17歳半頃~: 利用者・保護者へ18歳以降の制度変更について情報提供を開始。 将来の希望(進学、就労、地域生活など)に関する意向確認。 担当の障害児相談支援専門員と移行に向けた協議を開始。17歳9ヶ月頃~: 障害者総合支援法に基づくサービス利用に向けた具体的な検討。 必要に応じて障害支援区分の申請準備。 計画相談支援事業所(障害者総合支援法)の選定・連携開始。18歳直前~18歳到達後: サービス等利用計画(案)の作成・提出。 市町村への支給申請。 受給者証(障害福祉サービス)の交付。 新サービスの利用契約・開始。これはあくまで目安であり、個々の状況に応じて柔軟に対応する必要があります。特に、進路選択(高校卒業後の進路)と並行して進める必要があるため、学校との連携も不可欠です。キーパーソンは誰?相談支援専門員との連携のポイント18歳への移行プロセスにおいて、中心的な役割を担うのが「相談支援専門員」です。17歳までは「障害児相談支援専門員」が、18歳以降は「計画相談支援専門員」(特定相談支援事業所)が担当します。多くの場合、同じ相談支援事業所内で担当者が引き継がれるか、利用者が新たに計画相談支援事業所を選定することになります。事業者としては、以下の点を意識して相談支援専門員と連携することが重要です。早期からの情報共有: 利用者の状況、意向、現在のサービス利用状況などを早期に共有する。移行計画の共同作成: 相談支援専門員が中心となって作成する「サービス等利用計画(案)」について、事業所としての専門的見地から情報提供や意見交換を行う。役割分担の明確化: 申請手続きのサポートなど、事業所と相談支援専門員との役割分担を明確にしておく。定期的な連絡・調整: ケース会議などを通じて、定期的に進捗状況を確認し、必要な調整を行う。相談支援専門員との良好な連携関係が、スムーズな移行の鍵となります。障害支援区分認定からサービス利用開始までのステップ障害者総合支援法のサービスを利用するには、多くの場合「障害支援区分」の認定が必要です(一部サービスを除く)。これは、障害の多様な特性や心身の状態に応じて、必要とされる支援の度合いを総合的に示すものです。区分認定からサービス利用開始までの大まかな流れは以下のようになります。区分認定申請: 18歳になる前(時期は自治体による)に、市町村の障害福祉担当窓口に申請します。認定調査: 認定調査員が利用者本人や家族から心身の状況等について聞き取り調査を行います(80項目)。主治医意見書の提出も必要です。一次判定: 調査結果を基にコンピュータによる一次判定が行われます。二次判定: 一次判定結果、医師意見書、認定調査の特記事項などを基に、市町村審査会で二次判定(最終的な区分認定)が行われます。区分認定結果通知: 市町村から区分認定の結果が通知されます。サービス等利用計画(案)作成: 区分認定結果を踏まえ、計画相談支援専門員が計画(案)を作成します。支給申請: 計画(案)を添えて、市町村にサービス利用の支給申請を行います。支給決定・受給者証交付: 市町村が支給決定を行い、利用できるサービスの種類や量が記載された受給者証が交付されます。サービス担当者会議: 関係者が集まり、正式なサービス等利用計画を作成します。サービス利用契約・開始: 利用したいサービスを提供する事業者と契約を結び、サービス利用を開始します。この一連の流れには時間がかかるため、早めの申請準備が重要です。受給者証の切り替えと申請書類の注意点18歳になると、児童福祉法に基づく受給者証(通所受給者証など)から、障害者総合支援法に基づく受給者証(障害福祉サービス受給者証)への切り替えが必要になります。申請に必要な書類は、利用したいサービスや自治体によって異なりますが、一般的には以下のようなものがあります。支給申請書世帯状況・収入等申告書障害支援区分認定通知書(区分が必要なサービスの場合)サービス等利用計画(案)医師意見書(区分認定に必要な場合)その他、障害者手帳の写しなど申請書類は複雑な場合もあるため、事業者として、利用者や保護者がスムーズに書類を準備できるよう、情報提供や記入のサポートを行うことが求められます。ただし、申請代行は原則として相談支援専門員の役割となるため、連携して進めることが大切です。スムーズな移行支援のために事業所が取るべき具体的対応制度や手続きの流れを理解した上で、事業者として具体的にどのような対応を取るべきでしょうか。利用者の安心と円滑な移行を実現するための、3つの重要なポイントを解説します。利用者・保護者への丁寧な情報提供と意向確認の方法最も重要なのは、利用者本人と保護者への丁寧な情報提供と意向確認です。「18歳になったらどうなるの?」という不安に対し、分かりやすい言葉で制度変更の内容、手続きの流れ、サービスの変化などを説明する必要があります。説明会の開催: 対象となる利用者・保護者向けに説明会を実施し、全体像を伝える。個別面談の実施: 個々の状況や意向に合わせて、より詳細な説明や相談を行う。将来の希望(進路、暮らし方)を丁寧に聞き取る。分かりやすい資料の提供: 制度の概要や手続きの流れを図やイラストを用いてまとめた資料を作成・配布する。複数回の情報提供: 一度の説明で全てを理解するのは難しいため、時期を見ながら繰り返し情報提供を行う。意思決定支援: 利用者本人の意向を最大限尊重し、自己決定を支援する視点を持つ。一方的な説明にならないよう、疑問や不安に耳を傾け、対話を重ねることが信頼関係の構築につながります。学校・行政・他事業所との効果的な連携体制とは?移行支援は、事業所単独で行うものではありません。学校、行政(市町村)、相談支援事業所、移行先のサービス事業所など、関係機関との連携が不可欠です。学校との連携: 高校卒業後の進路(就職、進学、福祉サービス利用など)に関する情報を共有する。 三者面談(本人・保護者・学校)に同席し、移行に関する情報を共有・調整する。 学校で開催される進路説明会などに参加・協力する。行政(市町村)との連携: 最新の制度情報や手続きに関する情報を得る。 区分認定や支給決定の進捗状況を確認する。 困難ケースについて相談し、助言や協力を得る。相談支援事業所との連携: 前述の通り、情報共有、計画作成協力、役割分担を密に行う。移行先サービス事業所との連携: 利用者の情報(特性、必要な配慮など)を正確に引き継ぐ。 体験利用などを調整し、スムーズな移行を支援する。これらの関係機関と定期的に情報交換を行い、顔の見える関係を築いておくことが、効果的な連携体制の基盤となります。申請手続きにおける事業所のサポート範囲と役割障害支援区分の申請やサービス支給申請は、基本的に利用者本人や保護者が行うものですが、事業所として適切なサポートを提供することも重要です。ただし、どこまでサポートするかは、事業所の役割や相談支援専門員との連携の中で明確にしておく必要があります。情報提供: 申請に必要な書類や手続きの流れに関する情報を提供する。書類準備の補助: 申請書類の入手方法を伝えたり、記入方法についてアドバイスしたりする。 「本人の状況」など、事業所が把握している情報を提供し、書類作成に協力する。相談支援専門員への橋渡し: 申請手続きで困っている場合に、担当の相談支援専門員へ相談するよう促す。同行支援(限定的): 必要に応じて、保護者の同意のもと、市町村窓口への申請に同行する(主たる役割は相談支援専門員)。事業所が直接申請を代行することはできませんが、利用者が安心して手続きを進められるよう、寄り添いながらサポートする姿勢が大切です。まとめ:17歳利用者の未来を支える移行支援のために今回は、障害福祉サービスの経営者・管理者の皆様に向けて、17歳から18歳への移行期における制度変更のポイント高校生(17歳)が利用できる主なサービス18歳への具体的な移行プロセスと手続きの流れ事業所として取るべき移行支援の具体的対応上記について、制度の基本から実践的なポイントまでお話してきました。17歳から18歳への移行は、利用者の方々が児童から成人へとステップアップし、新たな生活段階に進むための重要な節目です。根拠となる法律が変わり、利用するサービスや手続きも変化するため、戸惑いや不安を感じる方も少なくありません。だからこそ、私たち支援を提供する事業所が、制度を正確に理解し、利用者や保護者の気持ちに寄り添いながら、丁寧な情報提供とサポートを行うことが不可欠なのです。学校や行政、相談支援事業所など、関係機関としっかりと連携し、チームとして利用者の未来を支えていく視点を持つことが、スムーズな移行を実現する鍵となります。この記事でご紹介した情報が、皆様の事業所における移行支援体制の整備や、具体的なサポート実践の一助となれば、これほど嬉しいことはありません。利用者の皆さんが、18歳以降も自分らしく地域で活躍し、豊かな人生を送れるよう、私たちにできる最善の支援を共に考え、実践してまいりましょう。