サービス終了時の支援経過記録|書き方と必須項目を例文付きで解説 (推奨)障害福祉サービスの経営者・管理者の皆様、日々の多忙な業務、本当にお疲れ様です。サービスの提供が終了する際の「支援経過記録」、どのように作成されていますか?「終了理由は具体的にどこまで書けばいいのだろう?」 「必須項目はこれで網羅できているか、監査は大丈夫だろうか…」 「利用者さんの大切な記録だからこそ、適切に残したいけれど、時間もなかなか取れない…」このようなお悩みや疑問をお持ちではないでしょうか。私も長年、福祉現場のICT化に携わる中で、記録業務の大切さと現場の皆様のご苦労を間近で感じてまいりました。サービス終了時の支援経過記録は、単なる事務作業ではありません。それは、ご本人にとっての支援の総括であり、次へのステップへの大切な引継ぎ情報、そして私たち支援者にとっても貴重な学びの機会となります。この記事では、多忙な経営者・管理者の皆様が、自信を持って、かつ効率的にサービス終了時の支援経過記録を作成できるよう、記録の目的と法的根拠(なぜ必要なのか)必ず含めるべき必須項目(何を記録するのか)分かりやすい記録を作成するための5つのポイント(どう書くのか)ケース別の具体的な書き方と文例上記について、現場での経験も踏まえながら、分かりやすく解説していきます。適切な記録は、利用者様の未来を支え、事業所の信頼を高める基盤となります。ぜひこの記事を参考に、日々の記録業務にお役立てください。目次なぜ重要?サービス終了時の支援経過記録の目的と法的根拠サービス終了時の支援経過記録は、単に「書かなければならないもの」ではありません。利用者様にとっても、支援者にとっても、そして事業所にとっても、非常に重要な意味を持っています。その目的と根拠を改めて確認しておきましょう。適切な支援の締めくくりを示す「最後の報告書」支援経過記録は、提供してきたサービスとその結果を客観的に示すものです。特にサービス終了時の記録は、これまでの支援の歩みを振り返り、利用者様の変化や成長、達成できたこと、そして残された課題などを総括する「最後の報告書」としての役割を果たします。丁寧な記録は、利用者様ご本人やご家族にとっても、これまでの支援を理解し、次へのステップに進むための大切な情報となります。私たちの支援がどのように利用者様の力になれたのか、真摯に向き合う機会とも言えるでしょう。運営基準で求められる記録の必要性とは?障害者総合支援法に基づく各サービスの運営基準において、サービス提供に関する記録の作成と保存が義務付けられています。例えば、就労継続支援B型の運営基準では、「サービスの提供に関する諸記録を整備し、…(中略)…サービスを提供した日から五年間保存しなければならない」と定められています(※)。サービス終了時の記録は、適切な事業運営を行っている証拠となる重要な記録です。監査等においても、サービス提供の事実や内容を確認するために、支援経過記録は非常に重要な書類として扱われます。(※厚生労働省令 具体的な基準はサービス種別により異なります)関係機関との情報共有を円滑にするために利用者様が他のサービスへ移行する場合や、相談支援専門員、医療機関など、他の関係機関との連携が必要な場面は少なくありません。そのような場合に、サービス終了時の支援経過記録は、利用者様の状況や必要な支援内容を正確に伝えるための重要なツールとなります。客観的で分かりやすい記録があれば、スムーズな情報共有が可能となり、切れ目のない支援を実現することにつながります。まさに、チームで利用者様を支えるための「共通言語」としての役割を果たすのです。【いつ・何を】サービス終了時の支援経過記録に必須の項目では、具体的にサービス終了時の支援経過記録には、いつ、どのような内容を記録すればよいのでしょうか。ここでは、一般的に必要とされる項目を解説します。事業所内でフォーマットを統一しておくと、記録の質を担保しやすくなりますね。記録すべきタイミング:サービス終了が決定したら速やかに記録は、記憶が新しいうちに作成するのが基本です。サービス終了が決定したら、できるだけ速やかに記録を作成しましょう。最終利用日から時間が経つほど、具体的な状況やエピソードを思い出すのが難しくなります。終了後すぐに記録を作成する習慣をつけることが大切です。終了理由:客観的な事実を具体的に記載するサービス終了に至った理由は、記録の中でも特に重要な項目です。「なぜサービス利用を終了することになったのか」を、客観的な事実に基づいて具体的に記載しましょう。考えられる主な終了理由としては、以下のようなものが挙げられます。目標達成: 個別支援計画で設定した目標が達成された(例:一般就労への移行、単身生活の開始)利用者都合: 転居、入院、他サービス利用開始、ご本人の意向による利用中止など事業者都合: 事業所の閉鎖など(極めて稀ですが)その他: 関係性の悪化、ルール違反など(この場合も客観的な事実経過を記載)いずれの場合も、「利用者の自己都合により終了」といった曖昧な表現ではなく、「〇〇のため、△△へ転居されることとなり、×月×日をもって利用終了」「□□への就職が決まり、個別支援計画の目標が達成されたため、×月×日をもって利用終了」のように、具体的な事実を記載することが求められます。サービス提供の最終状況:心身・生活の変化を捉えるサービス利用開始時と比較して、終了時点で利用者様の心身の状態や生活状況がどのように変化したかを記録します。具体的には、以下のような視点が考えられます。心身の状態: 健康状態、精神状態の安定度、服薬状況、ADL(日常生活動作)の変化など生活状況: 居住環境、日中活動の状況、食事・睡眠などの生活リズム、金銭管理、対人関係、家族との関係などサービス利用状況: サービスの利用頻度、参加態度、他の利用者との関わり、スタッフとの関係性など「当初は他者との交流を避ける様子が見られたが、徐々にグループ活動へ参加できるようになり、笑顔で会話する場面が増えた」「服薬管理が自身で安定して行えるようになった」など、具体的な変化を記述しましょう。最終的な目標達成度と今後の課題・見通し個別支援計画で設定された目標に対して、どの程度達成できたのかを評価し、記録します。達成できた点だけでなく、達成に至らなかった目標や、新たに生じた課題についても触れることが重要です。目標達成度: 各目標項目について、「達成」「一部達成」「未達成」などの評価と、その根拠となる具体的なエピソードや状況を記載。今後の課題: サービス終了後も継続して支援が必要と考えられる点、留意すべき点などを記載。見通し: 今後の生活や活動に関する見通し、期待されることなどを記載(可能であれば)。「〇〇の目標については達成したが、△△については引き続き支援が必要と考えられる」といった形で、客観的に評価しましょう。引継ぎ先への情報提供内容(必要な場合)利用者様が他のサービス機関や相談支援事業所などに移行する場合、スムーズな引継ぎのために情報提供が必要になります。記録には、引継ぎ先に伝達した主な内容や、情報提供を行った日付、担当者名などを記載しておくと良いでしょう。情報提供を行った機関名・担当者名情報提供日提供した主な情報(例:最終状況、今後の課題、留意点など)情報提供の方法(例:面談、電話、文書)情報提供の同意を利用者様から得ていることを前提とし、個人情報保護に配慮しながら必要な情報を共有します。【どう書く?】分かりやすい終了記録作成5つのポイント必須項目が分かっても、「どう書けば分かりやすい記録になるのか?」と悩む方もいらっしゃるでしょう。ここでは、誰が読んでも理解しやすく、支援に役立つ記録を作成するための5つのポイントをご紹介します。ポイント1:5W1Hで具体的な行動や発言を記述する記録の基本は「5W1H」です。When(いつ)Where(どこで)Who(誰が)What(何を)Why(なぜ)How(どのように)これを意識することで、状況が具体的に伝わる記録になります。例えば、「〇月〇日、作業室にて、〇〇さん(利用者)が、□□さん(スタッフ)に対し、笑顔で『ありがとう』と伝えた」のように記述すると、状況が目に浮かびやすくなりますね。「~の様子が見られた」といった抽象的な表現だけでなく、具体的な行動や発言を記述することを心がけましょう。ポイント2:客観的な事実と主観的な解釈は分けて書く記録には、実際にあったこと(客観的な事実)と、それに対する支援者の考えや感じたこと(主観的な解釈・評価)が含まれます。この二つを混同せず、明確に分けて書くことが重要です。事実: 「〇〇さんは、午前中の作業に集中できず、席を立つ場面が3回あった。」解釈/評価: 「(上記の事実から)〇〇さんは、体調が優れなかったのかもしれない。」「集中力の維持に課題があると思われる。」事実と解釈を分けて書くことで、他のスタッフや関係機関が読んだ際に、誤解なく情報を共有できます。特に、否定的な内容や課題について記述する際は、客観的な事実に基づいていることを明確に示す必要があります。ポイント3:誰が読んでも分かる平易な言葉を選ぶ支援経過記録は、作成者本人だけでなく、他のスタッフ、関係機関、場合によっては利用者様ご本人やご家族が読む可能性もあります。そのため、専門用語や略語の使用は最小限にとどめ、誰が読んでも理解できる平易な言葉で書くことが大切です。どうしても専門用語を使う必要がある場合は、簡単な注釈を加えるなどの配慮をしましょう。例えば、「ADL」ではなく「日常生活動作」、「アセスメント」ではなく「状況の聞き取り・評価」など、分かりやすい言葉に置き換える工夫が考えられます。ポイント4:利用者の成長やポジティブな変化も記録するサービス終了時の記録は、課題や反省点だけでなく、利用者様の成長や努力、達成できたことなど、ポジティブな側面にも焦点を当てて記述しましょう。「できなかったことができるようになった」「苦手なことに挑戦できた」「目標達成に向けて努力した」といったポジティブな変化を具体的に記録することで、利用者様ご本人の自信や次への意欲につながる可能性があります。また、私たち支援者にとっても、支援の成果を実感し、今後の糧とすることができます。支援のプロセス全体を肯定的に捉える視点を持つことが大切です。ポイント5:個人情報保護への配慮を忘れずに支援経過記録には、利用者様の個人情報が多く含まれます。記録の作成・保管・共有にあたっては、個人情報保護に関する法令や事業所の規定を遵守し、細心の注意を払いましょう。利用者様本人の情報以外の個人情報(家族、友人、他の利用者など)の記載は必要最小限にする。記録の保管場所を定め、アクセス権限を管理する。外部機関への情報提供は、利用者様の同意を得て、必要最低限の範囲で行う。これらの基本的なルールを守り、利用者様のプライバシー保護を徹底することが、信頼関係の基盤となります。【文例紹介】ケース別・サービス終了時の支援経過記録の書き方ここでは、具体的なケースを想定し、サービス終了時の支援経過記録の文例をいくつかご紹介します。あくまで一例ですので、実際の記録作成の際の参考にしてください。(※利用者名などは仮名です)文例1:目標達成による終了(一般就労への移行など)【終了理由】 個別支援計画に基づき一般就労を目指し活動。〇〇株式会社への就職が内定し、×年×月×日付で採用となったため、本人の希望及び計画に基づき、×年×月×日をもって当事業所(就労継続支援B型)の利用を終了とする。【サービス提供の最終状況】 就職決定後も、勤務開始に向け生活リズムの維持に努め、最終利用日まで安定して通所された。作業への集中力も高く、他の利用者への声かけなど、周囲への配慮も見られるようになった。就職への期待とともに、新しい環境への若干の不安も口にされていたが、前向きな表情で最終日を迎えられた。【最終的な目標達成度と今後の課題・見通し】 個別支援計画における「一般就労に必要なスキルを習得し、就職する」という長期目標は達成された。短期目標である「安定した勤怠」「基本的なビジネスマナーの習得」「PCスキルの向上」も概ね達成。今後の課題としては、職場での新たな人間関係の構築と、業務への適応が挙げられる。定期的な就労定着支援の利用を勧め、必要に応じて相談に乗る体制があることを伝達済み。【引継ぎ先への情報提供内容】 〇〇株式会社人事担当者及び就労定着支援事業所△△に対し、本人の同意を得て、最終状況、業務遂行上の配慮事項、緊急連絡先等を情報提供(×年×月×日、文書及び面談にて)。文例2:利用者都合による終了(転居・入院など)【終了理由】 ご家族の都合により、〇〇県へ転居されることが決定。それに伴い、当事業所(グループホーム)の利用継続が困難となったため、×年×月×日をもって利用終了となった。【サービス提供の最終状況】 転居決定後、荷物の整理などをスタッフと協力して進められた。他の利用者との別れを惜しむ様子も見られたが、新しい生活への期待も話されていた。最終利用日時点での健康状態は良好。身辺自立度は高く、日常生活は概ね安定していた。金銭管理については、引き続き一部支援が必要な状況であった。【最終的な目標達成度と今後の課題・見通し】 個別支援計画における「地域生活における安定した暮らしの継続」は概ね達成されていた。「計画的な金銭管理」については一部達成であり、転居先での継続的な支援が必要と考えられる。転居先の相談支援専門員と連携し、必要な支援が受けられるよう調整済み。【引継ぎ先への情報提供内容】 転居先の相談支援事業所□□に対し、本人の同意を得て、最終状況、必要な支援内容(特に金銭管理)、服薬状況、緊急連絡先等を情報提供(×年×月×日、電話及び情報提供書にて)。文例3:他サービスへの移行による終了【終了理由】 個別支援計画の見直し及び本人・家族との相談の結果、日中活動の場として、より本人の特性や意向に合ったサービス利用が望ましいとの結論に至った。△△(生活介護事業所)の利用が決定したため、×年×月×日をもって当事業所(放課後等デイサービス)の利用を終了とする。【サービス提供の最終状況】 移行先の見学や体験利用を経て、本人は新しい環境への期待を示していた。最終利用日まで、プログラムには意欲的に参加し、友人との関わりも良好であった。発語は少ないものの、指差しや簡単な単語で意思表示が可能。食事や排泄は一部介助が必要。気持ちの切り替えに時間を要する場面が見られることもあった。【最終的な目標達成度と今後の課題・見通し】 個別支援計画における「集団活動への参加」「簡単な意思表示」は達成された。「身辺処理の自立」は一部達成。今後の課題としては、新しい環境への適応、より豊かなコミュニケーション手段の獲得、身辺自立度の向上が挙げられる。移行先の事業所と連携し、本人のペースに合わせた支援をお願いしている。【引継ぎ先への情報提供内容】 移行先の△△(生活介護事業所)に対し、本人・保護者の同意を得て、最終状況、個別支援計画の評価、コミュニケーション方法、必要な配慮事項、アレルギー情報等を情報提供(×年×月×日、サービス担当者会議及び情報提供書にて)。これらの文例はあくまで基本的な型です。利用者様一人ひとりの状況に合わせて、具体的なエピソードや支援者の関わりなどを追記し、より個別性の高い記録を作成することを心がけてください。まとめ:適切な終了記録が利用者の未来と事業所の信頼につながる今回は、サービス終了時の支援経過記録について、記録の目的と法的根拠(なぜ必要なのか)必ず含めるべき必須項目(何を記録するのか)分かりやすい記録を作成するための5つのポイント(どう書くのか)ケース別の具体的な書き方と文例上記について、現場での経験も踏まえながら、分かりやすくお話してきました。日々の業務に追われる中で、記録作成は時に負担に感じられるかもしれません。しかし、サービス終了時の記録は、これまでの支援を振り返り、利用者様の歩みを未来へつなぐための非常に大切なプロセスです。適切な記録は、利用者様ご本人やご家族の安心につながるだけでなく、関係機関とのスムーズな連携を可能にし、ひいては事業所全体の支援の質向上と信頼確保にも貢献します。今回ご紹介したポイントや文例を参考に、ぜひ自信を持って、丁寧な記録作成に取り組んでみてください。私たち支援者一人ひとりの記録への意識が、利用者様のより良い未来を支える力になると信じています。皆様の事業所運営と、質の高い支援提供の実現を、心より応援しております。