就労継続支援B型 個別支援計画書の書き方:記入例とポイント解説就労継続支援B型事業所のサービス管理責任者(サビ管)や支援員の皆様、日々の支援業務、本当にお疲れ様です。利用者一人ひとりに寄り添った個別支援計画の作成は、質の高いサービス提供に不可欠ですが、「具体的にどう書けばいいのだろう?」「アセスメントや目標設定の項目で手が止まってしまう…」「実地指導で指摘されないか不安…」といったお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。私も長年、障害福祉サービスの現場でICT化などを通じて皆様の業務に触れる中で、計画作成の重要性と難しさを実感してきました。この記事では、就労継続支援B型の個別支援計画について、具体的な 「記入例」 を豊富に交えながら、各項目の書き方のポイントを分かりやすく解説していきます。この記事を読むことで得られることアセスメントからモニタリングまでの具体的な記入例がわかる利用者の意向を反映した目標設定のコツが掴める質の高い計画を作成するためのポイントが理解できる実地指導への不安が軽減されるなど、計画作成に関する疑問や不安を解消し、自信を持って取り組めるようになることを目指します。個別支援計画は、利用者の方々の 「働きたい」 という想いを実現するための大切な羅針盤です。ぜひこの記事を参考に、利用者にとっても、支援者にとっても価値ある計画作成を進めていきましょう。目次就労継続支援B型における個別支援計画の重要性とは?就労継続支援B型事業所において、個別支援計画は利用者様一人ひとりに合わせた適切なサービスを提供するための「設計図」であり、支援の根幹をなす非常に重要な書類です。単に書類を作成するというだけでなく、利用者様の意向を尊重し、その人らしい働き方や生活を実現するための道筋を示す羅針盤の役割を果たします。個別支援計画が目指すもの個別支援計画は、アセスメントを通じて把握した利用者様の意向、強み、課題などを踏まえ、具体的な目標を設定し、その目標達成に向けた支援内容を明確にするものです。これにより、支援者は共通認識を持って一貫性のある支援を提供できるようになります。また、利用者様自身も自分の目標や受ける支援内容を理解し、主体的にサービス利用に取り組む意欲を高めることにも繋がります。計画に基づいた支援を通じて、利用者様の就労意欲の向上、スキルアップ、そして地域社会での自立した生活の実現を目指していくのです。作成しない場合のリスク(減算対象など)個別支援計画の作成とそれに基づいた支援の提供は、運営基準において定められています。もし、計画が作成されていなかったり、内容が不十分であったり、計画に基づかないサービス提供が行われたりした場合は、実地指導等で指摘を受け、改善指導の対象となります。さらに、個別支援計画未作成減算の対象となり、報酬が減額される可能性があります。これは事業所の経営に直接的な影響を与えるだけでなく、利用者様への適切な支援が提供されていないことの表れでもあります。利用者様のためにも、事業所運営のためにも、個別支援計画の適切な作成と運用は不可欠なのです。【5ステップ解説】個別支援計画作成の基本的な流れ個別支援計画の作成は、利用者様を深く理解し、適切な目標設定と支援内容を決定するためのプロセスです。ここでは、就労継続支援B型における個別支援計画書の一般的な作成の流れを5つのステップに分けて解説します。なお、令和6年度(2024年度)報酬改定により、利用者本人がサービス担当者会議に参加することや、個別支援計画書を相談支援事業所へ交付・共有すること、5領域(健康・生活、運動・感覚、認知・行動、言語・コミュニケーション、人間関係・社会性)を含めた支援内容の記載など障害福祉サービスでは多くの改定がありました。これらの内容も踏まえたうえで、解説します。ステップ1:アセスメント(情報収集と課題分析)まず、利用者様本人やご家族との面談、関係機関からの情報収集、日々の作業場面での観察などを通じて、利用者様の状況を多角的に把握します。生活歴、病歴、障害特性、得意なこと、苦手なこと、興味関心、就労経験、現在の生活状況、そして何よりご本人の意向や希望を丁寧に聞き取ることが重要です。集めた情報を整理し、利用者様が抱える課題やニーズ、持っている強み(ストレングス)を分析します。このアセスメントが、質の高い個別支援計画を作成するための基礎となります。ステップ2:原案作成と目標設定アセスメントで得られた情報に基づき、個別支援計画の「原案」を作成します。ここでは、利用者様の意向を最大限尊重し、総合的な援助の方針を定めます。そして、その方針に基づき、長期的・短期的な目標を設定します。目標は、利用者様が達成可能であり、かつ意欲を持って取り組めるような、具体的で測定可能なものにすることがポイントです。例えば、「週5日、安定して通所できるようになる」「〇〇の作業スキルを習得し、工賃〇〇円を目指す」といった形です。目標達成のための具体的な支援内容も、この段階で検討します。ステップ3:サービス担当者会議の開催作成した原案をもとに、サービス担当者会議を開催します。この会議には、利用者様本人、ご家族(必要に応じて)、事業所のサービス管理責任者、直接支援員、そして必要であれば相談支援専門員や他の関係機関の担当者などが参加します。会議では、計画の原案について説明し、参加者全員で内容を検討・協議します。利用者様の意向を改めて確認し、専門的な見地からの意見交換を通じて、より実効性のある計画へと練り上げていきます。多職種が連携し、チームとして利用者様を支える体制を構築する上でも重要なプロセスです。ステップ4:利用者・家族への説明と同意サービス担当者会議での検討結果を踏まえ、修正された個別支援計画の内容について、利用者様本人とご家族(必要に応じて)に丁寧に説明します。専門用語を避け、わかりやすい言葉で、計画の目標、支援内容、期間などを説明し、内容について十分に理解・納得していただけるように努めます。そして、計画内容に対する同意を利用者様(場合によってはご家族も)から得ます。同意は口頭だけでなく、計画書への署名または記名押印によって確認することが一般的です。利用者様の自己決定を尊重する上で、この同意プロセスは非常に重要です。ステップ5:計画の交付と記録同意を得た個別支援計画は、利用者様及び関係者(相談支援事業所など)に交付します。事業所では、作成した個別支援計画を適切に保管し、日々の支援記録とともに管理します。計画は一度作成したら終わりではなく、定期的なモニタリング(評価・見直し)を通じて、目標の達成状況や利用者様の状態変化に合わせて内容を更新していく必要があります。支援の記録は、計画に基づいた支援が適切に行われているかを確認し、次の計画見直しに活かすための重要なエビデンスとなります。【項目別】個別支援計画の記入例と作成ポイント個別支援計画には、定められた様式に基づき、記載すべき項目があります。ここでは、主要な項目について、具体的な記入例と考え方のポイントを解説します。あくまで一例ですので、利用者様の状況に合わせて適宜修正してください。利用者及び家族の生活等に関する意向(記入例付き)利用者様ご本人と、必要に応じてご家族が、将来どのような生活を送りたいか、どのような働き方をしたいかといった意向を具体的に記載します。アセスメントで丁寧に聞き取った内容を、ご本人の言葉をできるだけ活かしながら記述することが大切です。【記入例】本人の意向: 「パソコンを使った作業に興味があり、将来はデータ入力などの仕事に関わってみたい。」 「週3日から始めて、体調を見ながら徐々に通所日数を増やしていきたい。」 「作業だけでなく、他の利用者さんとコミュニケーションをとる機会も持ちたい。」 「自分のペースで、無理なく続けられる働き方を見つけたい。」家族の意向: 「本人の体調を第一に考え、安定して通所できるよう支援してほしい。」 「少しでも工賃を得て、本人の自信につながる経験をしてほしい。」 「将来、一人暮らしも視野に入れられるよう、生活面のスキルも身につけてほしい。」【ポイント】本人の言葉を尊重し、可能な限りそのまま記載する。抽象的な表現ではなく、具体的な希望や目標がわかるように書く。家族の意向も、本人の意向と合わせて記載する(ただし、本人の意向を優先する)。総合的な援助の方針(記入例付き)アセスメント結果と利用者様・ご家族の意向を踏まえ、事業所としてどのような方針で支援を提供していくかを記載します。個別支援計画全体の方向性を示す重要な項目です。【記入例】「本人の『パソコン作業に関わりたい』という意向を尊重し、データ入力等の軽作業を提供するとともに、PCスキルの向上に向けた支援を行う。」「週3日の通所から開始し、本人の体力や精神面の安定を図りながら、生活リズムの確立を支援する。状況を見ながら、本人と相談の上で通所日数の増加を検討する。」「作業場面や休憩時間等で、他の利用者や職員とのコミュニケーション機会を設け、対人関係スキルの向上を支援する。」「本人のペースを尊重し、過度な負担にならないよう配慮しながら、就労意欲の維持・向上と、作業遂行能力の向上を目指す。」「家族や関係機関と連携し、本人の安定した地域生活をチームで支える。」【ポイント】利用者様の意向をどう支援に繋げるかを具体的に示す。事業所が提供できるサービス内容と結びつけて記載する。関係機関との連携についても言及する。生活に関する課題(記入例付き)利用者様が日常生活や社会生活を送る上で抱えている課題を記載します。アセスメント情報に基づき、客観的な事実と、それが生活にどのような影響を与えているかを具体的に記述します。【記入例】「長期間のひきこもり経験があり、生活リズムが不規則になりがちである。」「対人関係に苦手意識があり、自分から話しかけることが難しい場面がある。」「集中力が持続しにくく、長時間の作業になるとミスが増える傾向がある。」「金銭管理に不安があり、計画的な支出が難しい。」「公共交通機関の利用に慣れておらず、一人での外出に抵抗がある。」【ポイント】単に課題を列挙するだけでなく、それが生活にどう影響しているかを記述する。客観的な事実に基づいて記載し、推測や評価的な言葉は避ける。就労面だけでなく、生活面全般の課題を幅広く捉える。長期目標・短期目標(記入例付き)総合的な援助の方針に基づき、利用者様が目指す具体的な目標を設定します。長期目標(例:1年後)と短期目標(例:3ヶ月後)を設定し、段階的に達成を目指せるようにします。SMARTの原則(具体的、測定可能、達成可能、関連性、期限)を意識すると良いでしょう。【記入例】長期目標(1年後): 「週5日、安定して通所できるようになる。」 「基本的なPCスキル(Word、Excel)を習得し、データ入力作業を一人でこなせるようになる。」 「月額〇〇円以上の工賃を得られるようになる。」短期目標(3ヶ月後): 「週3日、欠席なく通所する。」 「職員の指示を受けながら、簡単なデータ入力作業を正確に行う。」 「休憩時間に、他の利用者1名と挨拶を交わす。」【ポイント】利用者様本人と相談し、納得感のある目標を設定する。具体的(Specific)、測定可能(Measurable)、達成可能(Achievable)、関連性(Relevant)、期限(Time-bound)を意識する(SMARTの原則)。スモールステップで達成感を積み重ねられるよう、短期目標を設定する。支援内容・担当者・実施頻度(記入例付き)設定した短期目標を達成するために、具体的にどのような支援を行うか、誰が担当するか、どのくらいの頻度で行うかを記載します。【記入例】目標支援内容担当者頻度週3日、欠席なく通所する・毎朝の声かけ、体調確認・安定した通所を妨げる要因の聞き取りと対応策検討生活支援員毎日(通所時)簡単なデータ入力作業を正確に行う・PC操作の個別指導(入力方法、保存方法等)・作業手順のマニュアル化と提示職業指導員週2回他の利用者1名と挨拶を交わす・挨拶の練習、声かけのタイミング指導・職員が間に入り、交流のきっかけ作り生活支援員随時【ポイント】目標と支援内容が明確に対応していること。「誰が」「何を」「いつ・どのくらい」行うかが具体的にわかるように記載する。実現可能な支援内容であること。評価・見直し(モニタリング)の時期(記入例付き)計画に基づいて行われた支援の効果を評価し、計画を見直す時期を明記します。通常、短期目標の期限に合わせて設定されますが、利用者様の状態変化に応じて随時見直しを行うことも重要です。【記入例】「短期目標の達成状況及び計画の適切性について、3ヶ月ごとにモニタリングを実施し、評価・見直しを行う。」「利用者様の状態に大きな変化が見られた場合は、上記時期に関わらず、速やかに計画の見直しを行う。」【ポイント】モニタリングの頻度(例:3ヶ月ごと、6ヶ月ごと)を具体的に記載する。定期的なモニタリングだけでなく、必要に応じた見直しについても言及する。個別支援計画作成で注意すべき3つのポイント質の高い個別支援計画を作成し、効果的な支援に繋げるためには、いくつかの注意点があります。ここでは特に重要な3つのポイントについて解説します。これらの点を意識することで、より利用者様に寄り添った計画作成が可能になります。ポイント1:利用者主体の計画になっているか個別支援計画は、あくまでも利用者様のための計画です。作成プロセス全体を通じて、利用者様の意向や希望を最大限に尊重し、自己決定を支援する視点が不可欠です。アセスメントでの丁寧な聞き取りはもちろん、目標設定や支援内容の検討においても、利用者様自身が「自分のための計画だ」と感じられるように、主体的な関与を促しましょう。計画書の説明や同意を得る際も、一方的な説明にならないよう、対話を重視し、質問や意見を表明しやすい雰囲気を作ることが大切です。「本人のための計画」という原点を常に忘れないようにしましょう。ポイント2:具体的で測定可能な目標設定ができているか目標設定は、個別支援計画の核となる部分です。目標が曖昧だったり、達成可能でなかったりすると、利用者様のモチベーション低下に繋がるだけでなく、支援の効果測定も難しくなります。「〇〇できるようになる」「〇〇に慣れる」といった抽象的な目標ではなく、「(いつまでに)〇〇を△△(回数・時間・程度)できるようになる」といった、具体的で測定可能な目標を設定することが重要です。SMARTの原則(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound)を意識し、利用者様が達成感を味わいながらステップアップしていけるような目標を設定しましょう。ポイント3:多職種連携は十分か利用者様への支援は、事業所内だけで完結するものではありません。医療機関、相談支援事業所、地域の支援機関、そしてご家族など、多くの関係者との連携が不可欠です。個別支援計画の作成にあたっては、サービス担当者会議などを通じて、これらの関係機関と情報を共有し、それぞれの専門性を活かした意見交換を行うことが重要です。計画書にも、関係機関との連携方針や役割分担を明記することで、チームとして一貫した支援を提供するための基盤ができます。日頃から関係機関との良好なコミュニケーションを心がけ、利用者様を中心とした支援ネットワークを構築していくことが求められます。効率的な個別支援計画作成のためにできること日々の業務に追われる中で、個別支援計画の作成に十分な時間を割くことが難しいと感じている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、計画作成の質を落とすわけにはいきません。ここでは、効率的かつ質の高い計画作成を実現するために、事業所として取り組めることをいくつかご紹介します。記録ソフト・システムの活用手書きでの計画作成や記録管理は、時間も手間もかかります。近年、障害福祉サービス向けの記録ソフトやシステムが多く登場しています。これらのツールを活用することで、アセスメント情報の管理、計画書様式の入力、過去の計画や記録の参照などが容易になり、作成時間を大幅に短縮できます。また、情報の共有もスムーズになるため、多職種連携の強化にも繋がります。私たちCare Viewer(ケアビューアー)も、障害福祉サービス向け「CareViewer challenge」を提供しており、記録業務の効率化をサポートしています。初期費用は0円。長期的な視点で見れば、業務負担の軽減とサービス品質の向上に大きく貢献するはずです。テンプレートや様式の活用厚生労働省や自治体などが提供している個別支援計画の標準様式や、事業所独自で作成したテンプレートを活用することも有効です。ゼロから作成する手間が省け、記載漏れを防ぐことにも繋がります。ただし、テンプレートをただ埋めるだけでなく、利用者様一人ひとりの状況に合わせて内容をカスタマイズすることが重要です。事業所内で使いやすい様式を検討し、継続的に改善していくことも良いでしょう。定期的な研修と情報共有個別支援計画作成に関するスキルは、経験とともに向上していくものです。サービス管理責任者だけでなく、直接支援員も含めて、計画作成に関する定期的な研修を実施し、知識や技術の向上を図ることが大切です。また、事業所内で作成事例や成功事例、あるいは課題となったケースなどを共有し、互いに学び合う機会を持つことも有効です。チーム全体のスキルアップが、結果的に効率的で質の高い計画作成に繋がります。まとめ:質の高い個別支援計画で利用者支援を充実させよう今回は、就労継続支援B型事業所のサービス管理責任者や支援員の皆様に向けて、個別支援計画の目的と重要性の再確認アセスメントからモニタリングまでの項目別記入例とポイント計画の質を高めるための3つの視点実地指導で注意すべき点上記について、具体的な記入例を交えながらお話してきました。個別支援計画の作成は、日々の業務の中でも特に重要度と専門性が求められる業務の一つです。この記事でご紹介した記入例やポイントを参考にすることで、より自信を持って、質の高い計画作成に取り組んでいただけることでしょう。利用者一人ひとりの「働きたい」という想いに寄り添い、その実現をサポートしていくために、個別支援計画は強力なツールとなります。ぜひ、この記事を日々の実践に活かし、利用者の方々にとって、そして支援者の皆様にとっても価値のある個別支援計画を作成・運用していってくださいね。