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障害福祉サービスの経営者・管理者の皆様、日々の事業運営、誠にありがとうございます。
2024年4月より、全ての障害福祉サービス事業者を対象に、BCP(事業継続計画)の策定が完全に義務化されました。未策定の場合は報酬減算の対象となるため、早急な対応が求められています。
しかし、「何から手をつければ良いのか?」「日々の業務が忙しく、策定まで手が回らない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
BCPとは? 事業継続計画(Business Continuity Plan)の略称です。テロや災害、システム障害などの緊急事態が発生した際、損害を最小限に抑えつつ、事業を継続、あるいは早期復旧させるための計画を指します。
この記事は、障害福祉サービス事業者の皆様が迷わずBCPを策定できるよう、以下の内容を分かりやすく解説します。
BCPの定義と重要性
具体的な書き方と策定5ステップ
すぐに使える記入例とひな形情報
この記事を読めば、専門知識がなくても実効性の高いBCPを完成させる道筋が見えてきます。未来への大切な備えを、一緒に進めていきましょう。
この記事の目次

近年、毎年のように起こる大規模な自然災害や、記憶に新しい新型コロナウイルスのような感染症のパンデミックは、私たちの事業運営に大きな影響を与えています。
特に、日々の支援を必要とする方々が多く利用される障害福祉サービスにおいては、どのような状況下であってもサービス提供を継続することが、社会的な使命とも言えるでしょう。
こうした背景から、介護サービスに続き、障害福祉サービスにおいてもBCP(事業継続計画)の策定が義務付けられることになりました。
「また負担が増えるのか…」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、これは単なる義務ではなく、多くのメリットをもたらす重要な取り組みなのです。
BCPとは、「Business Continuity Plan」の略語で、日本語では「事業継続計画」と訳されます。
これは、地震、洪水、感染症まん延などの予期せぬ緊急事態が発生した際に、事業所の損害を最小限に抑えながら、中核となる事業(サービス)を継続、または可能な限り早期に復旧させるための方針や手順をあらかじめ定めておく計画のことです。
よく「防災計画」と混同されがちですが、目的が少し異なります。
防災計画が主に「被害の発生防止・軽減」に焦点を当てるのに対し、BCPは「被害が発生することを前提」として、「それでも事業(サービス提供)をどう継続・復旧させるか」に焦点を当てています。
もちろん、両者は連携して取り組むべき重要な計画です。
2021年度の介護報酬改定において、全ての介護サービス事業者を対象にBCP策定が努力義務化され、2024年度から完全義務化されました。
これに続き、障害福祉サービスについても、2021年度の障害福祉サービス等報酬改定において、BCP対策が努力義務化され、2024年度から完全義務化されました。BCP対策が未策定の場合は報酬減算の対象となるので必ず策定し、定期的な見直しや訓練も実施する必要があります。
対象となるのは、居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、療養介護、生活介護、短期入所、重度障害者等包括支援、施設入所支援、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援(A型・B型)、就労定着支援、自立生活援助、共同生活援助(グループホーム)、相談支援(計画・地域)、地域移行支援、地域定着支援、放課後等デイサービス、児童発達支援など、基本的に全ての障害福祉サービス事業者です。
義務化の背景には、やはり近年の災害の激甚化や感染症リスクの高まりがあります。
支援が必要な利用者の方々が安心してサービスを受け続けられる体制を、社会全体で構築していく必要があるという国の考えの表れと言えるでしょう。
義務化されたから仕方なく…と捉えるのではなく、BCP策定には事業所にとって多くのメリットがあることを知っておきましょう。
主なメリットとしては、以下の点が挙げられます。
利用者・職員の安全確保:
緊急時の行動基準が明確になり、迅速かつ適切な避難誘導や安否確認が可能になります。
何よりも大切な人命を守るための基盤となります。
事業(サービス提供)の早期復旧と継続:
優先すべき業務を特定し、その継続・復旧手順を決めておくことで、緊急時の混乱を最小限に抑えられます。
サービス提供の空白期間を短縮し、利用者や家族の不安を軽減することにつながります。
社会的信用の向上:
BCPを策定し、適切に運用していることは、利用者やその家族はもちろん、地域社会、行政、関連機関などからの信頼を高めます。
人材採用においても、職員の安全確保に配慮している姿勢はプラスに働くでしょう。
BCP策定は、決して手間だけがかかるものではなく、事業所の持続可能性を高めるための重要な投資なのです。

「BCP策定って、具体的にどう進めればいいの?」
「専門知識もないし、何だか難しそう…」
そう感じていらっしゃる経営者・管理者の皆様、ご安心ください。
BCP策定は、以下の5つのステップに沿って進めれば、決して難しいものではありません。
完璧を目指すのではなく、まずは自事業所にとって必要なことから、一つひとつ着実に進めていきましょう。
まず最初に、緊急事態が発生した場合に、事業所として「何を最優先で守るのか」という基本的な考え方、つまり「基本方針」を定めます。
多くの障害福祉サービス事業所様においては、やはり「利用者様の生命と安全の確保」が最優先事項となるでしょう。
それに加えて、「職員の安全確保」「重要業務(コアサービス)の継続」「可能な限り早期の事業復旧」などを、優先順位をつけて明確にします。
この基本方針が、今後の具体的な計画策定を進める上での揺るがない軸となります。
次に、あなたの事業所の事業継続を脅かす可能性のある「リスク」を具体的に洗い出します。
これは、事業所の立地条件(例:河川の近く、土砂災害警戒区域、津波浸水想定区域など)や、提供しているサービス内容によって異なります。
考えられるリスクとしては、以下のようなものが挙げられます。
自然災害: 地震、洪水、台風、大雪、土砂災害、津波 など
感染症: インフルエンザ、ノロウイルス、新型コロナウイルス など
ライフライン停止: 停電、断水、ガス供給停止、通信障害 など
その他: 火災、システム障害、情報漏洩、職員の不足、サプライチェーンの寸断 など
お住まいの自治体が公開しているハザードマップなどを参考に、自事業所が遭遇する可能性のあるリスクを具体的にリストアップしてみましょう。
その際、各リスクが「発生した場合の影響度」と「発生頻度」も併せて評価しておくと、後の対策検討に役立ちます。
緊急事態が発生し、通常通りの事業運営が困難になった場合、全ての業務をそのまま継続することは難しいでしょう。
そこで、そのような状況下でも、最低限継続すべき、あるいは可能な限り早期に復旧させるべき「重要業務」を選び出します。
障害福祉サービスにおいては、利用者様の生命や健康維持に直結する業務、例えば、
食事、排泄、入浴などの身体介護
服薬管理、医療的ケア
安否確認、見守り
緊急連絡体制の維持
などが最優先の重要業務となる場合が多いでしょう。
放課後等デイサービスであれば、安全な場所の確保や保護者への連絡も重要です。
どの業務を、どのレベルまで(例:一部縮小してでも継続するのか)、どのくらいの時間で復旧させるか(目標復旧時間)、具体的な目標を設定します。
ステップ2で洗い出したリスクが発生した場合に、ステップ3で選定した重要業務をどうやって継続・復旧させるか、具体的な「対応策」を検討します。
例えば、以下のような対策が考えられます。
停電対策: 非常用発電機の導入、モバイルバッテリーやランタンの備蓄
断水対策: 飲料水や生活用水の備蓄、給水タンクの設置
感染症対策: マスク、消毒液、個人防護具(PPE)の備蓄、感染発生時のゾーニング計画、職員の健康管理体制
職員不足対策: 緊急時の人員体制(応援体制、代替職員リスト)、業務の優先順位付け、多能工化の推進
情報システム停止対策: 重要データのバックアップ、代替通信手段(衛星電話など)の確保、紙ベースでの記録・情報共有体制の準備
これらはあくまで一例です。
自事業所のリスクと重要業務に合わせて、必要な資源(ヒト、モノ、カネ、情報)の確保策も含めて、具体的な対応策を計画しましょう。
これまでのステップで検討した内容を、具体的な「BCP計画書」として文書化します。
厚生労働省などが提供しているひな形やガイドラインを参考にすると、効率的に作成できます。
難しく考えすぎず、まずは自事業所の実情に合わせて書けるところから書いてみましょう。
そして最も重要なのが、作成した計画書を「作って終わり」にしないことです。
計画書の内容を全ての職員に周知徹底し、いざという時に誰でも内容を確認できるように、保管場所を決めておくことが重要です。
さらに、定期的な研修や訓練を通じて、計画の実効性を高めていく必要があります(詳細は後述)。

BCP計画書に盛り込むべき内容は多岐にわたりますが、特に以下の項目は、障害福祉サービス事業所のBCPとして確実に含めておきたい重要項目です。
厚生労働省のひな形などを参考に、自事業所の状況に合わせて具体的に記載しましょう。
事業所の名称、所在地、連絡先、サービス種別、定員などの基本情報
BCP発動基準(どのような状況になったらBCPを発動するか)
緊急時の指揮命令系統(誰が責任者となり、誰に指示を出すか)
職員の安否確認方法と緊急連絡網(電話、メール、SNSなど)
利用者家族への連絡体制と連絡先リスト
関係機関(行政、医療機関、他の福祉事業所など)への連絡体制と連絡先リスト
これらを明確にしておくことで、緊急時の迅速な情報共有と意思決定が可能になります。
リスクの種類(地震、洪水、感染症など)に応じた初動対応の手順 情報収集の方法(信頼できる情報源の特定) 安否確認の手順と報告体制 避難誘導の方法と避難場所 関係機関への連絡手順
フローチャートなどを用いて、誰が見ても分かりやすいように示すことが有効です。
具体的な行動手順が明確であれば、パニックにならず冷静に対応できます。
ステップ3で選定した重要業務ごとに、以下の内容を記載します。 担当部署・担当者 業務継続・復旧のための具体的な手順 必要な資源(人員、設備、物品、情報など) 目標復旧時間(RTO: Recovery Time Objective) 代替手段(もし通常の方法が使えない場合の代替策)
実現可能な範囲で、できるだけ具体的に記載することがポイントです。
人員: 職員が出勤できない場合に備えた応援体制(他事業所との連携協定など)、代替職員リスト、業務の優先順位付け
モノ(設備・物品): 非常用電源(発電機、蓄電池)、燃料の備蓄 食料、飲料水、衛生用品(マスク、消毒液、トイレットペーパーなど)、医薬品、介護用品の備蓄リストと保管場所、管理方法 代替通信手段(衛星電話、無線機など)
場所: 事業所が使用不能になった場合の代替活動場所(地域の避難所、連携事業所のスペースなど)
情報: 重要書類やデータのバックアップ(クラウド活用、外部メディアへの保存など)、情報システムの代替手段
これらのリソースを平時から確保・準備しておくことが、BCPの実効性を大きく左右します。
提供しているサービス内容によって、BCPで特に考慮すべき点は異なります。
放課後等デイサービス・児童発達支援: 送迎中の被災リスクと対応(代替ルート、連絡手段) 活動場所の安全性確保(避難経路、代替活動場所) 保護者への緊急連絡体制と引き渡し方法 学校との連携
共同生活援助(グループホーム): 入居者の安全確保と避難誘導(特に夜間帯の体制) ライフライン停止時の生活維持(食事、衛生、室温管理) 医療的ケアが必要な方への対応 職員の参集体制
就労移行支援・就労継続支援: 利用者の安全確保(通勤・通所中の被災リスク) 作業場所の安全確保と代替作業場所 生産活動の継続・早期再開計画(取引先との連携含む) 賃金支払いに関する取り決め
自事業所のサービス特性を踏まえ、特有のリスクと必要な対策を計画に盛り込みましょう。

BCPは、一度作成したらそれで終わり、というものではありません。
むしろ、作成してからが本当のスタートです。
せっかく作成した計画が、いざという時に役に立たない「絵に描いた餅」になってしまわないよう、継続的な運用と見直しが不可欠です。
BCPの実効性を高めるためには、計画の内容を全職員が理解し、緊急時にそれぞれの役割に応じてスムーズに行動できるようになっている必要があります。
そのためには、定期的な研修や訓練(シミュレーション)の実施が極めて重要です。
研修: BCPの目的、基本方針、各人の役割、具体的な手順などを学ぶ機会を設ける。新規採用職員への研修も忘れずに。
訓練: 地震発生を想定した避難訓練、感染症発生を想定した役割分担訓練、安否確認訓練など、具体的なシナリオに基づいた訓練を実施する。机上訓練から始め、段階的に実践的な訓練に移行するのが良いでしょう。
訓練を通じて明らかになった課題(計画の不備、手順の分かりにくさ、必要な資源の不足など)は、次の計画見直しに必ず反映させましょう。
事業所を取り巻く状況は常に変化しています。
事業所の体制(人員、設備、サービス内容など)の変化
地域の状況(ハザードマップの更新、周辺環境の変化など)の変化
新たなリスク(新型感染症など)の出現
関連法規やガイドラインの改正
これらの変化に対応するため、BCPの内容は定期的に見直し、常に最新の状態に更新していく必要があります。
最低でも年に1回は見直しの機会を設け、必要に応じて計画を修正しましょう。
研修・訓練の結果や、実際に発生したヒヤリハット事例なども見直しの良い材料となります。

「そうは言っても、やっぱり自力で一から作るのは大変…」
そう感じる方もいらっしゃるでしょう。
幸い、BCP策定を支援するための公的な資料や相談窓口が用意されています。これらを積極的に活用しましょう。
厚生労働省のウェブサイトでは、障害福祉サービス事業者向けのBCP作成に関するガイドラインや、具体的なひな形(テンプレート)が公開されています。
これらは、BCPに盛り込むべき項目や考え方を理解する上で非常に役立ちます。
まずはこれらの資料に目を通し、自事業所の状況に合わせてカスタマイズしていくことから始めるのが効率的です。
参考:
障害福祉サービス事業所等における自然災害発生時の業務継続ガイドライン等|厚生労働省
障害福祉サービス事業所等における業務継続ガイドライン等について|厚生労働省
BCP策定に関して不明な点や困ったことがあれば、一人で抱え込まずに相談することも大切です。
都道府県・市区町村の障害福祉担当部署: 義務化に関する情報や、地域の実情に合わせたアドバイスが得られる場合があります。運営指導(実地指導)の際にBCPに関する指導を受けることもあります。
地域の社会福祉協議会: 福祉分野のネットワークを持っており、相談に乗ってくれる場合があります。
地域の商工会議所・中小企業支援機関: 事業継続に関する一般的な相談窓口を設けている場合があります。
業界団体: 障害福祉サービス関連の団体が、研修会や情報提供を行っている場合があります。
BCP策定支援コンサルタント: 専門的な支援が必要な場合は、コンサルタントに依頼するという選択肢もありますが、費用がかかります。
まずは身近な相談窓口に連絡してみることをお勧めします。
BCPの策定・運用においては、ICT(情報通信技術)を上手く活用することで、効率化や実効性の向上を図れる可能性があります。
例えば、
情報共有: クラウドサービスを活用し、BCP計画書や緊急連絡網をいつでもどこでも確認できるようにする。チャットツールで迅速な情報伝達を行う。
安否確認: 安否確認システムを導入し、職員や利用者の安否を迅速かつ確実に把握する。
記録・報告: タブレット端末などを活用し、緊急時の状況記録や報告を効率化する。
リモートワーク体制: 感染症まん延時などに、事務職員などが在宅で業務を継続できる体制を整備する。
私たちケアビューアーも、介護・福祉現場のICT化を支援する中で、BCP策定・運用に貢献できるようなツールの開発・提供を目指しています。
ICTの活用も視野に入れながら、より実効性の高いBCPを目指していくことが、これからの時代には求められるでしょう。

今回は、障害福祉サービス事業所の経営者・管理者の皆様に向けて、BCP策定の重要性から具体的なステップ、そして運用・見直しのポイントまで解説してきました。
BCP策定は、2024年度からの義務化に対応するという側面もありますが、それ以上に、
災害や感染症発生時における利用者様と職員の安全確保
どのような状況下でも可能な限りサービス提供を継続するための体制構築
社会からの信頼を得て、持続可能な事業運営を実現するための基盤
となる、非常に重要な取り組みです。
「難しそう」「時間がない」と感じていらっしゃる方も、まずはこの記事でご紹介した5つのステップを参考に、できることから始めてみませんか?
厚生労働省などが提供するひな形を活用したり、地域の相談窓口に相談したりするのも良いでしょう。 最初から完璧な計画を目指す必要はありません。 大切なのは、自事業所のリスクを認識し、備えへの第一歩を踏み出すことです。
そして、計画は作って終わりではなく、定期的な研修・訓練や見直しを通じて、常に「生きた計画」として機能するように育てていくことが重要です。
私たちも、福祉現場に寄り添うICTパートナーとして、皆様のBCP策定・運用を支援し、共に利用者様と職員の皆様が安心して過ごせる環境づくりに貢献して参りたいと考えております。
この記事が、皆様のBCP策定への不安を解消し、未来への確かな備えを進めるための一助となることを心より願っております。

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中元 秀昭
当社は、介護保険制度が開始された当初より、北海道札幌近郊エリアで地域密着型サービスを主軸とした介護施設の運営に携わってまいりました。
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「CareViewer」は、現場の視点を何よりも大切にし、ITに不慣れな方や外国籍のスタッフでも直感的に使える、分かりやすさにこだわって開発されています。
さらに、障害福祉分野にも事業を拡大し、障害福祉サービス事業所を開設するとともに、同サービスに対応したAI障がい福祉記録ソフト「CareViewer challenge」も開発・提供しております。


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