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現場知識を得る
個別支援計画を作る前にアセスメントシートを開き、「項目を埋めても本人の目標につながらない」と感じることはないでしょうか。
生活情報を集めるだけでは、本人が何を望み、どの条件なら力を発揮でき、どの支援を優先するかは見えてきません。
アセスメントでは、本人の言葉、家族や関係者の情報、支援者が観察した事実、支援者の見立てを分けて整理することが大切です。
この記事では、個別支援計画につながる項目と書き方を、架空事例で具体的に解説します。
記事には 個別支援計画アセスメントシート.xlsx も用意しました。全国統一様式ではないため、自事業所向けに調整してご活用ください。
この記事の目次

アセスメントは、個別支援計画の前段にある情報収集だけではありません。本人が希望する生活と現在の状況を捉え、その差を本人の強みや環境条件も含めて整理し、支援内容を検討する過程です。まず目的と周辺書類との関係をそろえます。
厚生労働省の指定障害福祉サービス運営基準では、個別支援計画の作成に当たり、利用者の能力、置かれている環境、日常生活全般の状況等を評価し、希望する生活や課題等を把握することが示されています。自己決定の尊重と意思決定支援への配慮も必要です。
つまりアセスメントの目的は、「何ができないか」を分類することではなく、次の問いへ答えることです。
本人はどのような生活を望んでいるか
すでにできていること、好きなこと、頼れる人は何か
どの場面で困り、どの条件なら安定するか
本人が選び、意思を伝えるにはどの方法が合うか
支援者や環境をどう変えると希望へ近づけるか
どの支援を優先し、どう変化を確かめるか
アセスメント結果は、そのまま計画の文章になるわけではありません。本人と確認した意向、支援ニーズ、優先順位を基に、長期目標、短期目標、支援内容、達成時期、担当、留意事項へ変換します。計画と関係のない情報を漫然と集めないことも重要です。
事業所によって書類名と役割は異なりますが、一般にフェイスシートは基本属性と連絡先等を一覧にし、アセスメントシートは生活状況・意向・強み・環境を分析し、ニーズ整理表は複数の課題を統合して優先順位を付けるために使います。
書類 | 主な役割 | 代表的な情報 |
|---|---|---|
フェイスシート | 本人の基本情報を素早く確認 | 連絡先、家族、受給者証、医療、緊急連絡先 |
アセスメントシート | 希望する生活と現状を多面的に把握 | 本人の意向、生活、健康、強み、環境、意思表示 |
ニーズ整理表 | 情報を統合し支援課題を優先 | 希望、現状、背景、解決すべきニーズ、優先度 |
個別支援計画 | 合意した目標と支援を実行可能にする | 方針、長短期目標、支援内容、担当、期間 |
同じ情報を何度も転記する必要はありません。利用者IDや更新日で関連付け、フェイスシートの医療情報を参照するなど、正本を決めます。一方、アセスメントの「本人はどう感じているか」を基本情報欄へ埋没させないようにします。
添付Excelでは「基本情報」「領域別アセスメント」「ニーズ整理」「使い方」の4シートに分けます。自事業所ですでにフェイスシートがある場合は基本情報シートを省き、既存書類を参照する運用でも構いません。
アセスメントは担当者が一人で過去記録をまとめて完成させるものではありません。本人への面接を中心に、家族、相談支援専門員、他サービス、医療・教育・就労等の関係者から、本人同意と目的に沿って必要な情報を集めます。
基本の流れは次のとおりです。
1. 利用目的と既存資料を確認し、聞き取り項目を絞る
2. 本人へ面談の目的を分かりやすく説明する
3. 本人の希望、嫌なこと、選び方、得意なことを確認する
4. 生活場面を観察し、事実を記録する
5. 家族・関係者情報と本人の意向を分けて整理する
6. 強み、環境上の促進要因・阻害要因、リスクを整理する
7. 本人と優先するニーズを確認する
8. 原案へ変換し、個別支援会議で意見を求める
面談を一度に長時間行う必要はありません。本人が疲れやすい場合は時間を分け、写真、実物、選択カード、なじみの職員の同席等を使います。答えが出ないことを「意向なし」とせず、確認方法と反応を記録して継続します。

項目は多ければ漏れがなくなるとは限りません。使わない質問が並ぶと、本人への聞き取りが尋問のようになり、更新も続きません。サービス種別に必要な領域を押さえつつ、本人の生活目標に関係する情報を具体的に記録します。
基本情報では、本人の氏名・呼称、連絡方法、家族・支援者、利用サービス、緊急連絡先、受給者証等を管理します。詳細な個人情報は目的を明確にし、必要以上に複製しません。
領域別アセスメントでは、次の項目を事業所のサービスに合わせて選びます。
生活歴、これまでの経験、現在の暮らし
一日の生活リズム、睡眠、食事、水分、排せつ、整容
移動、着替え、金銭、買い物、家事等の日常生活
健康状態、通院、服薬、アレルギー、発作等の必要な配慮
日中活動、就労、学習、余暇、地域参加
対人関係、コミュニケーション、感覚特性
家族、住環境、経済、移動手段、利用中のサービス
虐待、事故、災害、行方不明等の安全上の配慮
健康情報は診断名の一覧だけでなく、支援場面で必要な観察と対応を確認します。ただし支援者が医学的判断を推測で書かず、医師・看護職員等の指示、確認日、情報源を明記します。緊急対応はアセスメント欄だけで終わらせず、別の手順書や緊急連絡体制へつなげます。
本人の意向は「家族が安心してほしいと言っている」だけでは足りません。本人が言葉で表した希望、選んだ物、視線、表情、近づく・離れる行動、過去から一貫する好みを丁寧に記録します。
意思決定支援の欄には、次のような具体情報を置きます。
観点 | 記入例 |
|---|---|
理解しやすい方法 | 写真を2枚ずつ提示すると選べる |
返答方法 | 指さし、視線、首振り、短い言葉 |
必要な時間 | 提示後10秒程度待つ |
安定する環境 | 静かな場所、午前中、なじみの職員 |
避ける関わり | 選択を急かす、4つ以上を同時に示す |
確認の工夫 | 別日にも同じ選択を確認し、一貫性を見る |
障害福祉サービスの利用等にあたっての意思決定支援ガイドラインは、本人の自己決定を尊重し、意思・選好を推定する場合も関係者で慎重に検討する考え方を示しています。支援者の推測を本人の希望として断定しないことが大切です。
本人と家族の意向が異なる場合は、どちらかを消して一つにまとめません。それぞれの言葉、背景、安全面の懸念、本人へ説明した内容を分け、会議で調整します。
課題欄が「できない」「介助が必要」ばかりになると、支援は欠点を埋める方向へ偏ります。同じ場面から、本人の力、使っている工夫、助けになる環境を見つけます。
たとえば「朝の準備ができない」ではなく、次のように分解します。
本人の希望: 遅刻せず作業所へ行きたい
できていること: 服が順番に置かれていれば自分で着替えられる
難しい条件: 選択肢が多いと止まり、口頭指示が続くと怒りやすい
環境の強み: 写真付き手順、前夜の準備、静かな洗面所
本人の工夫: 時計のアラームを使っている
支援ニーズ: 前夜に服を二択で選び、朝は写真手順で確認する
リスク: 急かすと外へ飛び出すことがあるため、距離を取り落ち着く時間を確保
リスクは支援を制限する理由だけに使いません。起こりやすい条件、前兆、本人が落ち着く方法、連絡先、禁止事項を具体化し、本人の希望を実現しながら安全を確保する方法を検討します。

アセスメントの質は、専門用語の多さではなく、情報の出所と考えた過程が追えるかで変わります。ここでは架空の「朝の準備」の例を使い、観察からニーズ、個別支援計画の目標へ進む書き方を確認します。
「意欲がない」「理解できない」「問題行動がある」は、支援者の評価を含む表現です。まず、いつ、どこで、何があり、本人がどう反応したかを事実として書きます。
曖昧な記録
朝の準備に意欲がなく、何度言っても動けない。
分けた記録
本人の言葉: 「作業所には行きたい。朝に決めるのは嫌」
観察事実: 7時30分に職員が3回口頭で着替えを促すと、布団をかぶった。前夜に本人が選んだ服を順に置いた翌日は、声かけ1回で7時45分までに着替えた。
家族情報: 自宅でも前夜に服を決めると準備しやすかった。
支援者の見立て: 通所意欲の不足ではなく、朝の選択と連続した口頭指示が負担になっている可能性がある。
次の確認: 写真手順の有無と声かけ回数を2週間記録する。
見立てには「可能性がある」「次に確認する」と書き、事実と同じ扱いにしません。情報源と日付を記載すると、古い情報が現在も有効か判断できます。
「一人でできるか」だけで評価すると、少しの支援でできる力が見えません。支援量を段階に分けます。
自分で行える
道具や環境調整があれば行える
声かけ・見守りで行える
一部介助で行える
全介助が必要
未確認・本人が希望しない
朝の準備例では、「着替えができない」ではなく、「前夜に二択で服を選び、写真順に並べると、朝は声かけ1回で着替えられる」と書けます。本人が使える力と必要な環境が同時に分かります。
本人がやりたくないことを能力不足にしない点も重要です。家事や活動を希望しない場合は、その理由、代替方法、本人にとっての優先順位を確認します。自立を、すべて一人で行うことだけと捉えず、必要な支援を選んで望む生活を送ることとして考えます。
収集した課題をすべて計画へ載せると、本人にとって何が大切か分からなくなります。「本人の希望に近づく」「安全・健康に関わる」「他の目標の土台になる」「本人が取り組みたい」の観点で優先順位を決めます。
朝の準備例は次のように変換できます。
段階 | 記入例 |
|---|---|
本人の希望 | 朝に迷う時間を減らし、遅刻せず作業所へ行きたい |
解決すべきニーズ | 自分で選んだ服と分かりやすい手順で準備したい |
長期目標 | 自分に合う準備方法を使い、週4日無理なく通所する |
短期目標 | 前夜に服を二択から選び、写真手順を見て朝8時までに着替える日を週3日つくる |
支援内容 | 20時に服を2組提示し本人が選ぶ。選んだ服を写真順に並べる。朝は写真を指し、10秒待ってから必要時のみ声をかける |
評価方法 | 選択の有無、着替え開始・終了時刻、声かけ回数、本人の表情・発言を記録する |
計画原案は本人へ分かりやすく説明し、個別支援会議で担当者等の意見を求めます。アセスメントから自動的に支援者の結論を出すのではなく、本人の同意と選択を経て計画にします。
アセスメントシートの記録・確認に使える、編集可能なExcelテンプレートです。
「テンプレート」「記入例」「使い方」の3シートを収録しています。
事業所の運用、個別の支援方針、最新の指示に合わせて調整してください。

初回アセスメントを保存して終わりにすると、古い生活状況が計画の根拠として残ります。日々の支援記録、本人面談、モニタリングで得た変化を反映し、必要な人へ必要な範囲で共有できる運用を整えます。
個別支援計画の見直し時には、目標達成状況だけでなく、本人の希望、生活環境、健康状態、強み、支援方法が変わっていないかを再評価します。全項目を毎回ゼロから聞く必要はありません。前回から変化した領域と、新しい希望に関係する領域を重点的に確認します。
定例時期を待たず確認する例は、入退院、服薬変更、住まい・家族状況の変化、就労・通所先の変更、新しい意思表示、事故・ヒヤリハット、支援量の大きな変化です。
変更履歴には、更新日、更新者、情報源、変更前後、計画への影響を残します。過去情報を消して上書きすると、変化の理由が分からなくなります。古い版を保管し、最新の正本を明確にします。
アセスメントシートには健康、家族、経済、障害特性等の機微な個人情報が含まれます。チーム支援に必要だからといって、全項目を全職員・全関係機関へ共有するわけではありません。
共有前に、目的、相手、項目、方法、本人同意、保存期間を確認します。現場職員には日々の支援で必要な方法と留意点、相談支援専門員には計画調整に必要な意向と生活変化、医療機関には診療・支援連携に必要な情報というように範囲を考えます。
メール誤送信や私物端末への保存を防ぐルール、閲覧権限、印刷物の回収、退職・異動時の権限削除も必要です。個人情報保護委員会のガイドラインを参照し、法人の個人情報管理規程と合わせて運用してください。
添付Excelは、項目の見直しや少人数での試行に使いやすいひな形です。利用者ごとにファイルを複製する場合は、ファイル名、正本保存場所、編集権限、版番号、バックアップを統一します。
利用者数や関係職員が増えると、Excelでは転記、最新版確認、期限管理、アクセス制御が負担になります。記録ソフトを検討するときは、次を確認します。
基本情報を重複入力せず参照できるか
本人の意向とアセスメント履歴を版ごとに残せるか
ニーズを個別支援計画の目標へ引き継げるか
日々の記録とモニタリングから再評価できるか
閲覧・編集権限と変更履歴を管理できるか
CareViewer challengeの個別支援計画書作成支援も比較材料になります。どのツールでも、項目を埋めることを目的にせず、本人との対話と支援判断の過程が残る運用を優先しましょう。

アセスメントシートは、情報を多く集めるほど良いのではなく、本人の意向、観察事実、強み、環境条件、支援ニーズを計画へつなげられることが重要です。
まず一人分について、「できない」と書かれた項目を一つ選び、できる条件、本人の工夫、環境上の障壁へ分けてみてください。
本人に確認しながら更新を重ねることで、アセスメントは保管書類ではなく、本人主体の支援をチームで考える土台になります。

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この記事を書いた人

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