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「本人の言葉と職員の考えが混ざってしまう」「何を根拠に次の支援を決めたのか伝わらない」。障害福祉の支援記録で、このような悩みを抱える事業所は少なくありません。
記録を整理する方法の一つがSOAPです。SOAPは、主観的情報、客観的情報、評価、計画の4つに分けて記録する型で、医療・看護だけでなく福祉の支援記録にも活用されています。
ただし、アルファベットの欄を埋めるだけでは、良い記録にはなりません。Sに職員の感想を書いたり、Aで根拠のない診断をしたり、Pで担当者が独断で支援方針を変えたりすると、かえって情報が分かりにくくなります。
私たちCareViewerは、福祉現場の記録業務を支援する中で、型は職員を縛るものではなく、チームで考える順番をそろえるために使うことが大切だと考えています。
この記事では、SOAPの意味、S・O・A・Pの書き分け、障害福祉の場面別例文、現場への導入方法を解説します。
この記事の目次

SOAPを使いこなすには、最初に4区分の役割と限界を理解する必要があります。SOAPは文章を長くするための書式ではなく、得られた情報と支援者の判断を分けるための枠組みです。障害福祉で活用するメリットと、法令上の記録との関係を確認しましょう。
SOAPは、次の4語の頭文字を取った記録方法です。
S:Subjective(主観的情報)
本人や家族が話したこと、本人が感じている痛み、不安、希望など
O:Objective(客観的情報)
職員が観察した行動・表情・状況、測定値、実施した支援など
A:Assessment(評価)
SとOを根拠に、支援上どのように捉えたか
P:Plan(計画)
評価を踏まえて次に確認・実施・共有すること
たとえば、本人が「今日は作業を休みたい」と話した場合、この発言はSです。机に伏せている、体温が37.2度だった、前夜の睡眠が短かったと本人から申告があった、という情報は、情報源を明確にしてOへ整理します。Aには「体調と睡眠の影響を確認する必要がある」、Pには「静かな場所で休憩し、30分後に体調を再確認する」などを書きます。
SOAPの利点は、出来事だけでなく、なぜその対応を選んだのかが追いやすいことです。一方、Aは正解を当てる欄ではありません。得られた情報から考えられることを、支援者の職務範囲で慎重に記します。
障害福祉では、本人の意向、生活環境、行動、体調、家族や関係機関からの情報など、さまざまな要素を組み合わせて支援を考えます。SOAPを使うと、情報と判断が混ざりにくくなり、別の職員が記録を読んだときにも支援の流れを追いやすくなります。
主なメリットは次のとおりです。
1. 本人の言葉を支援者の解釈から分けられる
本人の希望や困りごとが、職員の言い換えだけで消えてしまうことを防ぎます。
2. 評価の根拠を確認できる
Aだけを読んで判断するのではなく、SとOへ戻って妥当性を検討できます。
3. 次の勤務者が行動しやすい
Pに確認時刻、担当、連絡先などを具体的に書けば、申し送りにつながります。
4. 個別支援計画やモニタリングに活かしやすい
同じ目標に関するS・O・A・Pを振り返ることで、支援方法の効果や本人の変化を確認できます。
特に、状態変化、相談、支援方法を変更した場面、家族や関係機関との連携など、支援者の判断を共有したい場面と相性がよい方法です。「何が起きたか」だけでなく「次にどうするか」まで一連で残せるためです。
ただし、SOAPの区分があるだけで客観的な記録になるわけではありません。SとOに具体的な情報がなく、Aに「様子を見る」、Pに「継続」とだけ書けば、次の行動は伝わりません。4区分のつながりがあるかを確認してください。
SOAPは便利な記録方法ですが、障害福祉サービスで一律に使用が義務付けられた法定様式ではありません。厚生労働省の指定障害福祉サービス運営基準では、たとえば居宅介護について、サービスの提供日、内容その他必要な事項を提供の都度記録することが定められていますが、記録方法をSOAPに限定してはいません。
そのため、SOAPを導入するときも、各サービス種別で必要な記録項目、実績記録票、個別支援計画、加算に関する記録などを別途確認する必要があります。SOAPの欄を埋めたことで、必要な提供日、時間、担当者、具体的なサービス内容が抜けては本末転倒です。
また、毎日の定型的な確認をすべてSOAPで長文にする必要もありません。食事量、服薬、入浴、通所、作業実績などは、チェック項目や短い自由記述のほうが確認しやすい場合があります。SOAPは、評価や次の支援を残す意味がある場面に使うと効果的です。
自事業所でSOAPを採用するかは、次の観点で判断しましょう。
現在の記録で事実と判断が混ざっているか
状態変化や支援方法の検討を共有しにくいか
記録を個別支援計画の見直しに活かせているか
職員が4区分を理解する研修時間を確保できるか
記録ソフトや紙様式で無理なく入力できるか
SOAPは目的ではなく、良い支援をチームで続けるための手段です。

SOAPで迷いやすいのは、SとO、AとPの境界です。どの欄に書くかを考える前に、「誰から得た情報か」「観察できる事実か」「支援者の見立てか」「次の行動か」を問い直すと整理できます。各項目の役割と書き方を具体的に見ていきましょう。
Sには、本人が感じていることや話したことを記します。痛み、不安、希望、満足、拒否、生活上の困りごとなど、外から直接測れない本人の経験が中心です。
本人の発言は、意味を変えない範囲でかぎ括弧を使うと伝わりやすくなります。
「昨日はなかなか眠れなかった」
「人が多い場所は疲れる」
「袋詰めよりシール貼りをやりたい」
「薬を飲むと眠くなる気がする」
家族や関係者から得た情報をSへ含める運用もあります。その場合は「母より『昨夜は23時ごろ就寝した』と連絡あり」のように、誰の発言かを明記します。本人の発言と家族の見方を同じものとして扱わないことが大切です。
避けたいのは、職員の評価をSへ書くことです。「意欲が低い」「機嫌が悪い」は本人の主観ではなく、支援者の解釈です。また、本人の言葉を整えすぎると意向が変わることがあります。「作業拒否」と要約する前に、実際にどのような言葉があったかを残しましょう。
発語で意思を表現しにくい方の場合、Sを無理に作る必要はありません。表情、視線、身振り、コミュニケーション機器での選択など、観察した情報をOに具体的に記し、本人の意思確認方法も共有します。
Oには、職員が見た・聞いた事実、測定値、支援した内容、その結果を記します。別の人が同じ場面を見た場合、おおむね同じように確認できる情報が目安です。
たとえば次のような内容です。
9時10分に来所し、玄関で5分間立ったまま入室しなかった
職員が予定表を示すと、本人はうなずいて作業室へ移動した
体温37.2度、咳なし、水分200mL摂取
仕分け作業を15分行い、完成数は12個
他利用者の発言後、椅子を引いて席を離れた
「落ち着きがない」「元気そう」「いつもどおり」といった表現は、読み手によって意味が変わります。「廊下を10分間に4往復した」「挨拶に笑顔で返答し、朝食を全量摂取した」のように、何を観察したかへ置き換えます。
Oには職員が行った支援も具体的に書きます。「声かけした」だけでなく、「作業工程を3段階に分けたカードを提示し、最初の工程を一緒に行った」とすると、後から支援方法を再現できます。
数値は有効ですが、何でも数値化する必要はありません。変化の比較や安全確認に意味がある回数、時間、量、測定値を選びます。記録量を増やすより、Aの根拠になる情報を押さえることが重要です。
Aは、SとOから支援上考えられることを整理する欄です。診断を行う欄ではありません。本人の状態、環境、支援方法の影響、個別支援計画の目標との関係などを検討します。
良いAは、SとOのどの情報を根拠にしたか分かります。たとえば「本人が睡眠不足を訴え、作業開始後に机へ伏せる様子があったため、疲労が参加に影響している可能性がある」です。「怠けている」「精神状態が悪化した」といった根拠のない断定は避けます。
Pには、Aを踏まえた次の行動を具体的に書きます。
30分休憩後に体温と本人の希望を再確認する
次回は作業開始前に工程カードを提示する
夕方の申し送りで責任者へ共有する
同じ状態が3日続いた場合はサビ管へ報告する
本人の同意を確認したうえで家族へ連絡する
「経過観察」「支援継続」だけでは、誰が何を見るのか分かりません。確認する項目、時期、担当、報告条件をできる範囲で明確にします。
Pに個別支援計画の変更が必要と思われる内容があっても、一人の支援員が独断で計画を変更するわけではありません。「サビ管へ共有し、支援会議で検討する」のように、事業所の意思決定手順へつなげます。

SOAPは実際の場面に当てはめると理解しやすくなります。ここでは、就労支援での作業参加、体調不良、対人トラブルの三つの例を紹介します。例文はそのまま転記するのではなく、実際に観察した内容、本人の意向、事業所の手順に合わせて調整してください。
就労継続支援B型で、利用者さんが作業開始をためらった場面を考えます。
S(主観的情報)
本人より「今日は細かい作業をすると疲れそう。箱を運ぶ仕事ならできる」と発言あり。
O(客観的情報)
9時30分、シール貼りの席へ案内すると、本人は席の前で立ち止まり着席しなかった。職員が本日の作業一覧を示すと、箱の運搬を指さした。10時から職員と一緒に箱を5箱運び、その後は一人で10箱を所定の位置へ運んだ。ふらつきや息切れなし。
A(評価)
本人は作業全般を拒否しているのではなく、当日の体調を踏まえて作業内容を選びたい意向があると考えられる。選択肢を視覚的に示したことで意思表示しやすくなり、作業参加につながった。
P(計画)
次回も作業開始前に2〜3種類の選択肢を示し、本人が選べるようにする。細かい作業への疲れについて、休憩後に本人へ確認し、同様の訴えが続く場合はサビ管へ共有する。
この例では、Sの「疲れそう」をそのまま「作業意欲がない」と評価していません。Oで実際の選択と参加状況を確認し、Aで支援方法との関係を考え、Pで再現可能な次の対応へつなげています。
生活介護で、昼食後に腹部の不調を訴えた場面です。
S(主観的情報)
本人より「おなかが少し痛い。朝から便が出ていない」と発言あり。痛みの程度を尋ねると「我慢できる」と返答。
O(客観的情報)
13時20分、本人が腹部に手を当てて職員へ申し出た。体温36.6度。嘔吐、冷汗、顔色不良なし。昼食は主食・副食とも全量、水分150mLを摂取。看護職員へ報告し、静かな場所で休憩した。13時50分の再確認時、「さっきより楽」と話した。
A(評価)
現時点で観察できる大きな状態変化はないが、腹痛と排便状況について継続確認が必要。本人から症状の変化を伝えられている。
P(計画)
14時30分に痛み、顔色、嘔気、排便の有無を再確認する。痛みの増強、嘔吐、顔色不良が見られた場合は、事業所の緊急時手順に従い看護職員・責任者へ連絡する。帰宅時に本人の同意と事業所ルールに沿って家族へ経過を共有する。
体調記録では、Aで病名を推測しないことが重要です。測定値と観察事実をOへ整理し、Pで再確認条件と連絡手順を明確にします。医療職の指示がある場合は、その内容と情報源を記録します。
共同生活援助の共有スペースで、利用者同士の言い争いが起きた場面です。
S(主観的情報)
Aさんより「テレビの音を下げてほしいと言ったのに聞いてくれなかった」と発言。Bさんより「急に怒られたと思った」と発言。
O(客観的情報)
19時10分、共有リビングでAさんがBさんに向かって大きな声で「うるさい」と2回発言した。Bさんも立ち上がり、「怒鳴らないで」と返答。職員が二人の間に入り、Aさんへ居室で話を聞くこと、Bさんへ別の職員とリビングで待つことを提案し、双方が同意した。接触、けが、物品の破損なし。10分後、二人とも通常の声量で職員と会話できた。
A(評価)
Aさんは音量への希望を伝えたが、相手に伝わらない状況で声が大きくなった可能性がある。Bさんは突然強い口調で言われたと受け止めている。安全を確保し、双方から別々に事実と希望を確認する必要がある。
P(計画)
当日は双方の同意が得られなければ直接の話し合いを行わない。翌日、管理者へ経過を共有し、テレビ利用のルールと希望の伝え方を本人たちと個別に確認する。必要に応じて個別支援計画上のコミュニケーション支援をサビ管と検討する。
対人場面では、一方を「加害者」「問題行動」と決めつけず、各人の発言と観察事実を分けます。事故・虐待・権利擁護上の報告が必要な場合は、SOAPの記録だけで終えず、事業所の報告手順を優先します。

SOAPを導入しても、職員が各欄の意味を理解していなければ定着しません。全記録を一斉に変更するより、使う場面を決め、短い例文と確認基準を共有するほうが現実的です。よくある誤り、記録形式の使い分け、テンプレートと記録ソフトの活用を確認します。
SOAPで起きやすい誤りは、区分を埋めることに意識が向き、情報同士のつながりが失われることです。
NG1:Sに職員の感想を書く
S「今日は元気がないように見えた」
これは本人の主観ではありません。Oに「挨拶への返答がなく、机に伏せていた」と観察事実を書き、本人の発言があればSへ分けます。
NG2:Oに評価を混ぜる
O「作業への意欲が低く、集中できなかった」
「意欲が低い」は評価です。Oには「作業開始後5分で席を離れ、その後10分間休憩室で過ごした」と書きます。
NG3:AがSとOから導けない
A「家庭環境が原因と思われる」
家庭に関する情報がS・Oにないなら根拠が分かりません。確認できていないことは断定せず、「本人へ背景を確認する必要がある」などにとどめます。
NG4:Pが抽象的
P「様子を見る」
「次回の作業開始前に本人の希望を確認し、選択肢を提示する」のように、誰が何をするかを書きます。
管理者が修正する際は、完成文を代わりに書くより「このAの根拠はSとOのどこですか」「Pを読んだ次の職員は行動できますか」と問いかけると、職員が考え方を身につけやすくなります。
SOAPは、すべての出来事を4区分で記録するための万能様式ではありません。使う場面を決めると、記録負担を抑えながら効果を得やすくなります。
SOAPが向いている場面は次のとおりです。
本人から相談・希望・拒否の表明があった
体調や行動にいつもと異なる変化があった
支援方法を工夫し、その反応を評価したい
家族・関係機関から重要な情報があった
個別支援計画の目標に関する変化があった
申し送り後に再確認や対応が必要
一方、予定どおり実施した定型的な内容は、チェック項目と短い補足で十分な場合があります。たとえば服薬確認は、実施時刻、確認者、本人の状態、特記事項を決めた様式で残し、変化があったときにSOAPを追加する運用が考えられます。
「SOAPで書く記録」と「定型記録」の境界を、サービス種別と事業所の実情に合わせて決めてください。判断に迷った場合の相談先も明確にします。記録の型が複数あっても、利用者別・日付順に経過を追えることが大切です。
SOAPを定着させるには、S・O・A・Pの欄だけでなく、各欄に何を書くかを短く表示したテンプレートが役立ちます。
たとえば次のような入力補助を用意します。
S:本人・家族は何と話したか
O:何を観察・測定し、どの支援を行ったか
A:SとOから支援上どう考えたか
P:誰が、いつ、何を確認・実施・共有するか
研修では、事業所で実際に起きやすい場面を匿名化して使い、同じ事例を複数職員が記録します。その後、情報の抜けや区分の違いを話し合います。月に数件を抽出し、Aの根拠とPの具体性を確認する方法なら、日々の負担を抑えながら改善できます。
CareViewer challengeの支援記録登録機能のような記録ソフトを使う場合は、テンプレートや入力項目をそろえ、利用者別の履歴を確認しやすくできます。スマートフォン、タブレット、PCや音声入力など、現場に合う入力方法も検討できます。
ただし、システムが自動的に適切なAやPを作るわけではありません。入力例、確認者、修正ルール、個別支援計画へ反映する流れを一緒に整えることが必要です。まず一つの場面から試し、入力時間と共有のしやすさを確認しましょう。

SOAPは、S(主観的情報)、O(客観的情報)、A(評価)、P(計画)の4区分で支援記録を整理する方法です。本人の言葉と観察事実を分け、そこから導いた評価と次の支援をつなげることで、判断過程をチームで共有しやすくなります。
SOAPは法定の必須様式ではなく、すべての記録に使う必要もありません。状態変化、相談、支援方法の検討など、評価と次の行動を残したい場面から導入すると運用しやすくなります。
最初は事業所でよくある場面の例文を作り、SとO、AとPが混ざっていないかを確認してください。CareViewer challengeのような記録ソフトで入力項目をそろえることも、記録の標準化と共有を支える方法の一つです。

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